研究概要 |
安全で容易に照射実験の行なえる紫外線(UV;波長254nm)を500mw・sec1【cm^2】の線量で日本住血吸虫(Sj)セルカリア(cer.)に照射し、BALB/cマウスに免疫した場合、最も高い再感染防御効果(47.3%)が認められた。生体内に移入されたUV照射cerは、免疫部位局所で数日以内に死滅し、再感染に対する防御免疫を誘導することが判明した。 UV照射cer.の腹腔内注射による免疫を繰り返し、脾細胞から型の如く細胞融合を行ない単クローン抗体(McAb)を作製した。1Fで防御免疫の標的抗原とみなされるschistosomulaの表層を認識するMcAbを選別し、しかも他の抗原(cer,肺或いは肺内幼若虫,成虫,虫卵)との認識部位が異なる12種のMcAbが得られた。これらの内、7種が感染4日と10日目の肺及び肝寄生幼若虫表層に結合する抗体であった。Cer.から転換したschistosomulaと肝内幼若虫の表層抗原には、共通抗原の存在が示唆されたが、肺幼若虫に対しては4種のMcAbで結合が認められず、この発育期虫体の表層抗原は異なることが推測された。肺幼若虫表層抗原を認識する4種のMcAbを選び、腹水移入によるinvivo検定の結果、3種が有意な防御効果を示した。比較的高い防御率(21.2及び18.0%)が認められた2種は、1Fで成虫の柔組識と虫卵に、また成虫の外皮に強く結合する抗体であった。In vitroでschistosomula障害作用を検定した結果、成虫の外皮に結合するMcAbと補体の存在下でschistosomulaはマウス好中球により強い障害を受け死滅することが明らかとなった。これらの結果から、部分的にではあるが、再感染に対して防御免疫を誘導するMcAbがSjにおいても樹立され、しかもこのMcAbは成虫の柔組識や外皮と共有するepitapeを認識していることから、抗原の収量が限定されているschistosomulaにかわり、成虫々体を使った抗原の解析と分離・精製を容易にするなど、今後の防御免疫に関する基礎的研究に有用であると考える。
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