研究概要 |
Trypanosoma burcei gambiense(Tbg)の抗原変異機構を明らかにしようとした. 最初に, 一時的に治癒せしめたマウスに再発してくるTbgの抗原型とTbg感染家兎の血清中に認められる抗Tbg抗体の経時的出現の様子を組み合わせて, マウスでの一次再発Tbgの抗原型は家兎においても早期に出現することを確かめた. その間にTbgの4つの変異抗原型に対する特異モノクロナル抗体(MAb), 0, 9-1, 9-2, 11-1を準備した. 次に, クロン化したTbgをマウスに感染させ, 対応するモノクロナル抗体で処理することにより, クロン化したTbgの中にも既に10^<-5>から10^<-4>の割合で, 次の抗原型をもつ原虫が含まれていることがわかった. 更にin vitroでTbgの抗原型変異の生じ方を検討するため, Tbgの培養系の改良を進めた. マウス新生仔の脳, 筋由来細胞をfeeder layer cell, 侍養細胞として, 牛胎仔血清と牛新生仔血清を各々5%に加えたイーグルのMFM培地でTbgの培養が可能であることがわかった. しかしながら, これらの細胞は初代培養でのみTbgの培養に有効であるという限界があり, 培養Tbgは細胞間隙にはいりこみ巣状になって増殖するため原虫を回収するのに困難であることから, 10^<-5>という僅少な部分を検出することにより単純な, 侍養細胞なしでの培養系が不可欠であることが判明した. そのような培養を種々試みた結果, イーグルのMEMとライポビッツのL-15培地を等量混合した基礎培地に5×10-4M EDTA, 10^<-4>Mシステイン, 3×10^<-6>M2-メリカプトエタノール, 10^<-3>Mピルビン酸ナトリウム, 及び牛胎仔血清を10%に加えたものがTbgの培養維持を可能にすることがわかった. この開発は種々な実験に, 非常に有用である. この培養系に特異MAbを添加すると, 凝集した原虫はやがて解離してきた. その過程において培養液の凝集価は, 時間とともに低下した. 解離した原虫に再度同じMAbを作用させると凝集が生じた.
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