アフリカ睡眠病病原体(Trypanosoma gambiense)は吸血昆虫であるツエツエバエによって媒介され吸血時に感染型原虫として感染し皮下にて血流型原虫に移行し血流中に寄生する。ヒトの血流中において多数の抗原性変異がみられる血流型原虫はツエツエバエ体内で昆虫体内型原虫を経由し感染型原虫に移行する際ある一定の基本抗原にかえることが知られている。この事実からワクチンには感染型原虫抗原のみが有効であるがツエツエバエから分離される抗原は極めて微量なことがワクチン開発の障害になっている。本研究の目的はアフリカ睡眠病のワクチン開発にむけて培養系を用い宿主感染型である血流型原虫より出発し昆虫体内型原虫を経由、感染型原虫までのライフサイクルを再現、抗原性変異のない、地域特異性のある感染型原虫基本抗原の検索を簡単かつ迅速に行う方法を確立することである。60年度は血流型原虫から昆虫体内型原虫への移行に際する最適条件を検討し有効な培養法を確立した。61年度は昆虫体内型原虫から感染型原虫への移行に際する最適条件を検討するために次の研究を計画した。1.培養液の検討2.緩衝液HEPESの濃度の検討3.培養液に添加のアミノ酸の検討4.培養温度の検討5.培養液交換の間隔の検討。本年度の研究の結果次のことが判明した。培養液は血流型原虫の場合と同じでアミノ酸の添加は必要なかった。昆虫体内型原虫は27℃にて培養液交換を毎日おこない7日後に、37℃にて培養すると10〜15日目には昆虫体内型原虫の次の発育段階の宿主感染型原虫である血流型原虫として増殖しているのが証明された。
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