研究概要 |
昭和60,61年に以下の5項目について検討し、各々成果を得た。1.コクシジオイデス・イミチスの形態学的性状、発育速度,湿度感受性および分節型分生子の形成条件について検討した。加えて類似菌マルブランケアとの鑑別点を明らかにした。 2.真菌の生体内における変換過程を観察る為、生きている菌糸が包埋されている寒天の小ブロックをマウス腹腔内に埋没し、経時的に腹腔内から回収し、菌糸の変化を観察する方法-寒天埋没法-を開発した。本法を用いてコクシジオイデス・イミチスの菌糸が分節型分生子を経由して球状体になり、内生胞子が球状体から放出されるまでの寄生環を観察した。本法によりコクシジオイデス・イミチスの比較的安全で迅速な同定が可能となった。 3.コクシジオイデス・イミチスの分節型分生子をマウスの尾静脈に注入し、球状体,球状体内での内生胞子の形成、内生胞子放出に至る生活史を、走査形電子顕微鏡により観察し、その寄生環を電顕レベルで明らかにした。 4.コクシジオイデス・イミチスの寄生環の各段階の発育に対する生体側の組織反応について検討し、以下の結果を得た。1)寄生環は平均5日の単位で回転していく。2)第1次寄生環の菌に対する生体の細胞反応は弱く、成熟した球状体から内生胞子の放出が起こると多形核白血球の激しい反応が起こる。3)第2次寄生環の後期に化膿性病巣は肉芽腫性病巣に変っていく。これらの結果から、少ない菌量でコクシジオイデス症が発生する理由は、接種された分節型分生子に対し、生体側は弱い細胞反応しかとりえぬことにあると推測された。 5.昭和61年度に行った「コクシジオイデス・イミチスの迅速同定法 の研究にもとづき、患者からの分離菌の同定を行い、診断を確定した。
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