研究概要 |
マウスIL2の生物学的,物質学的性状をあきらかにするためにIL2遺伝子をクローニングし、ウィルスベクターに挿入し、培養細胞で発現させることを試みた。マウスIL2遺伝子はコンカナバリンAで刺激したマウス脾臓細胞より調製したCDNAライブラリーより合成プローブを用いてクローニングした。IL2cDNAはSV40後期プロモーターの下流に連結し、ウシパピローマウイルス(BPV)DNAに挿入した。得られたIL2-BPV DNAはCa-リン酸沈澱法によりマウスC127細胞にトランスフェクトした。3週間後に生じたフォーカスより7株のトランスフォーマント細胞を得た。これらの細胞株の培養上清についてIL2活性を調べたところ3〜15単位/ml産生していた。この産生量はSV40の複製系を利用したCos細胞でのトランジエントな発現系(Kashimaら)よりも100倍程度低ったが、プラスミドあたりのIL2産生量は同程度であった。この系の特徴である持続的なウィルスベクー感染について調べたところ、6ケ月後に7株中 株でDNAの脱落が起きていたが、そのうち2株は細胞DNAにインテグレートされていた。脱落しなかった細胞株でもウィルスコピー数の低下が認められた。低下した細胞でのIL2産生量はそれに比例して低下していた。このような、ウイルスベクター(パピローマウィルス)のコピー数減少は他の遺伝子の発現の際にも認められており、この系の欠点でもあるが、数ケ月前間の培養では安定しており、充分目的の遺伝子産物の発現系として利用可能であると思われる。今後は、長期間安定に細胞内に維持されうるウィルスベクターの開発と発現量を高めるための強力なプロモーターの導入が課題である。
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