研究概要 |
本研究はB細胞分化の最終段階に働き活性化B細胞を抗体産生細胞にまで分化させるT細胞由来のリンホカイン,Tcell replacing factor(TRF)の物理化学的性状と機能、それに応答するB細胞の性質、特にTRF応答性の遺伝的支配の解明を目的とした。 1.TRFの物理化学的性質を究明するため核酸の側からのアプローチを試みてTRF-mRNAのin vitro翻訳産物の活性測定法を確立した。これはTRF産生ハイブリッド、【B_(151)】細胞よりmRNAを抽出しアフリカツメガエル卵母細胞に注入し、その培養上清のTRF活性を慢性B白血病細胞である【BCL_1】の培養系にIL2とともに添加するというものである。具体的には【BCL_1】細胞をIgM抗体産生細胞にまで成熟させる能力をもってTRF活性とする。この方法でTRFmRNAのサイズが約1.5〜1.8kbと認められた。 2.TRFcDNAを単離して、一次構造を解析することにより、3つのNグリコシル化可能な部位と2つのS-S結合可能な部位を見出した。in vitroでの翻訳産物を調べてみるとまず分子量12500のタンパク質が合成され、それがNグリコシル化されて分子量約25000のサブユニットとなり、この二量体の分子量約5万の分子がTRF活性を示すと考えられた。また、このTRFcDNA由来の産物はTRFのみならずB細胞を分裂させる能力(BCGF【II】)の活性をも示した。 3.TRFは活性化B細胞に働き分泌型の免疫グロブリンH鎖のmRNAレベルを増加させるがその作用はμmRNAにおいて特に顕著である。 4.TRFに対するモノクローナル抗体を作製し、新しいTRF精製法を確立した。この抗体で精製されたT細胞由来のTRFは分子量約50,000で分子量約25,000のサブユニットから成ることが確かめられた。当初TRF低応答性マウスのB細胞の株化を試みたが、我々の使ったマウス白血病ウィルス(CasBrM)ではT細胞が株化されたのみであった。TRF受容体の問題は精製されたリコンビナントTRFの結合試験により解明している。
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