研究概要 |
昨年度は、抑制性T細胞ハイブリドーマに特異的な遺伝子の一つを単離することができた。本年度は、研究遂行の結果、以下の成果を得た。1)抑制性T細胞ハイブリドーマの1つに特異的に発見される遺伝子の一次構造を解析し、全DNA塩基配列を決定できた。DNA塩基配列から推定されるアミノ酸配列から、単離した遺伝子は、リーダー配列から始まり、免疫グロブリン可変領域との相同配列、膜貫入部、細胞質内部位を有する膜蛋白質をコードすると推定できた。2)単離した遺伝子が、細胞内で膜蛋白質発現に寄与していることを再確認するため、hybridization-selected cell free translation assayを行なった。その結果、転写されたmRNAが、分子量約25000ダルトンの分子をコードすることが判明した。3)1),2)と並行して、抑制性T細胞ハイブリドーマに表現される細胞膜分子のうち、抗原結合分子を同定し、膜上で他分子と分子複合体を形成する可能性の有無を検討したところ、ホモダイマー分子か分子量近似の分子とのヘテロダイマー分子として挙動している可能性を示唆する結果を得た。 単離した抑制性T細胞ハイブリドーマ特異的遺伝子は、その一次構造解析から、免疫グロブリン多重遺伝子族に含まれる可能性が高いと推定できるが、その場合、遺伝子再構成を伴わない免疫グロブリン可変領域に相当する領域の単独発現か、あるいは、免疫グロブリン多重遺伝子の中でも独自の発現様式をとるユニークな遺伝子群に属するかのどちらかと思われる。単離した遺伝子が抗原結合分子をコードするか否かについては、確定した結果を得ていないが、発現特異性から、結合分子か、抗原分子と同調した遺伝子発現を有する産物をコードしている可能性が高い。
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