研究概要 |
B細胞の分化増殖機構を解明するため多くの研究者により種々のサイトカインや抗IgM抗体などでB細胞を刺激し、その結果産生される非特異的なポリクロナルな総Ig量を測定する方法が採用されている。しかしながら、生体内で生じる免疫反応は本来抗原特異的なものであり、従ってB細胞により産生される抗体も当然のことながら抗原特異性を有する。この点から考え、前記の非特異的な刺激実験はB細胞の機能を充分に反映しているとは云い難い。我々は今回、細胞融合法を用いることにより細胞表面に抗原特異的受容体を有する単クローン性B細胞株を樹立し、この細胞を実験に用いることによりB細胞が如何なる過程を経て抗原特異性を有する抗体産生細胞へ分化し得るのかにつき詳細に検討を加えた。〔実験材料と方法〕1.細胞融分:PEGとDMSOを用いる従来の方法によった。親株としてHGPRT酵素欠損でHAT培地感受性を示すB細胞変異株2.52Mを使用。あらかじめTNP-LPSで免疫しておいたA/Jマウスの脾細胞より得たB細胞と2.52Mを細胞融合し、3週間HAT培地で培養した2細胞表面TNP基特異的受容体の検出はTNP-SRBCを標的としたロゼット形成能の有無で調べた。3.細胞表面抗原の同定は、各種のモノクロナル抗体で細胞を処理後、FITC標識二次抗体で染色しcytofluorometryにより解析した。〔実験結果と考察〕上記の方法によって得られた代表的なハイブリドーマの一つであるTP67.21は90%以上の頻度でTNP-RFCを形成したが、freeTNP-conjugateであるTNP-alanineやBet2の存在下ではロゼット形成能は著明に抑制された。一方TP67.21の細胞表面上にはIgM,【IA_k】,【IE_k】,B220,FcrR C3RIL-2RなどB細胞に特徴的なマーカーが存在していることをcytofluorometryにより確認した。以上の結果は、TP67.21はTNP基特異的抗原特異性を示すB細胞クローンであることを強く示唆している。
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