研究概要 |
愛媛県喜多郡五十崎町における高血圧の成因に関する疫学的作業仮説を得ることを目的に本調査を試みた。五十崎町は山間部に開けた盆地で、本対象地区は脳血管疾患による死亡率が県下でも高く、従来より、その根本的な解決は食生活の改善にあると考えられていた。 食構造の解析は前報と同様である。すなわち、副食多食習慣因子:この因子得点が高い人は野菜類,魚貝類,油類,卵類を多く摂る傾向にある。主食習慣因子:(パン・牛乳・バター)と(米・味噌・魚介類)がセットとなっている。副食習慣因子:嗜好の対極に精肉と大豆製品がある。 血圧値を従属変数として食習慣、栄養素などとの関連を解析するために重回帰分析を行った。寄与率および標準化回帰係数から血圧を上げる因子として従来から指摘されていた年齢および肥満度が挙げられる。 副食多食因子は男子の収縮期血圧および女子の拡張期血圧と負の標準化回帰係数を示しており、副食を多く摂ること、この場合には野菜類,油脂類,魚介類を沢山食べることが血圧値を下げることに繋がっていると思われる。主食習慣因子が収縮期血圧と負の標準化回帰係数を示しており、このことは米食単独ではなくパン食を取り入れている食事の欧風化傾向が見られた人々の血圧値の低いことを示している。 肥満者は正常者に比べて全体的に栄養素の充足度が高く、多食の傾向を示した。食習慣については、副食多食因子については肥満者は正常者に比べて低く、おかずの摂取量が少ない傾向にある。主食習慣因子については肥満者は正常者に比べて食事の欧風化傾向が見られた。この地区での高血圧対策上の食事指導は野菜類の油炒めなどのようなおかずをとるように指導することが望ましいと思われる。
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