研究概要 |
皮膚毒性の評価のために、化学物質の皮膚一次刺激性および皮膚感作性を客観的に評価する方法を確立し、かつ、これに関与する諸要因を明らかにする目的で、この研究を行い、本年度に、下記のような知見を得た。 1)試料としてパラフェニレンヂアミンを用い、アジユバンドを使用しない從来のBiihler法と、アジュバンドを使用した我々のBiihlerの変法とを実施して、それぞれ0.5%の初感作、0.1%,0.05%,0.01%,0.005%の誘発刺激における感作率の変効を観察し、モルモットにおいては、アジユバンド(FCA)を用いることによって感作率が高まることを認め得た。同様な傾向は、ヂニトロクロルベンゼンによる実験でもうかがわれ、FCAの投与による増感の有効性は、貼布感作後に高く、とくに反覆貼布の場合は2回目貼布後が最も有効と思われた。 2)これまでの動物試験成積に基づく皮膚貼布試験のヒトへの応用として、ダコニールによって誘発される喘息患者に実施し、陽性反応を得たので、農業從事者417名の第一次調査から撰ばれた約100名について皮膚試験、呼吸器能調査を実施し、ダコニールの一次刺激性は確認したが、感作性については明らかに認めることはできなかった。 3)皮膚貼布試験における一次刺激反応を客観的に評価するためにレーザードブラー血流計測の応用を試み、モルモットにフィンチャンバーを用いて0.1%乃至10%のラウリル酸ナトリウム(SLS)を貼布し、26時間および48時間後の発株赤を、Draizeの紅班のスコアによる判定と血流計の読み(V)と比較し、紅班の程度をより客観的に記載できることを確めることができた。レーザドブラーは予定より早く今年度試用できたが、産業化学物質の皮膚一次刺激性および皮膚感作性を客観的に評価する上で有効な方法と考えられる。
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