研究概要 |
1.当大学関連施設から1〜79才の一般人の血清490検体を採取し、我々の開発したRK-13細胞を用いる高感度のマイクロ中和法により単純ヘルペスウイルス(HSV)中和抗体を測定して次の点を明らかにした。 (1)年令層別のHSV中和抗体保有率を調べたところ、25年前,15年前の報告に比べ若年層の抗体保有率の低下が見られた。 (2)抗体陽性者の平均抗体価、標準偏差については年令層による差はほとんど認められず、この点も以前の報告とは異なっていた。 2.病院勤務者(20-49才)の血清544検体を採取し、1.と同じ方法によって中和抗体測定を行った。このデータを年令,所属科,勤務形態などの観点から解析し、次の結果を得た。 (1)病院勤務者全体の年令層別抗体保有率は一般人のそれとほぼ同じであったが、20才代前半でやや高い傾向が見られた。 (2)職種別に見ると、医師の抗体保有率は一般人,他職種に比べ全年令層にわたって低かった。一方、看護婦の保有率は全年令層にわたって一般人より高い傾向があり、特に20才代前半でその差が大きかった。 (3)看護婦を勤務形態別に見ると、20才代において外来勤務者が病棟勤務者より、また、内科系勤務の者が外科系の者より高い抗体保有を示した。 3.看護婦177人について同一人の血清を18カ月間に2〜3回採取し、中和抗体価の変動を調べた結果、次の事実が明らかになった。 (1)抗体陽転は20才代にのみ観察され、陽転率は3.4%であった。この価は同年令層の一般人について計算により求めた陽転率よりも高かった。 (2)抗体価の有意上昇率は40才代のみが32%と高く、他の年令層ではいずれも約10%であった。他方、この観察期間中に抗体価の低下を示す例は認められなかった。
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