マッチングは分析疫学研究におおいて交絡変数除去を目的として、主に研究計画の段階で実施される。その意義は妥当性と効率であると、報告されている。特に、分析疫学研究の対象となっている要因や疫病に交絡変数の影響が強大である場合に、その効率が上昇する。しかし、その信頼性に関する研究がどちらかと言うと充分になされていない。年齢は疾病の死亡率や罹患率に強く影響している。そこで、cohort研究における1変量連続型交絡変数の場合のキャリパー・マッチングに関し、年齢を例として、数値例計算を実施した。 その計算内容は、1)マッチされた対照例の対象疾病の期待発生率比(曝露例のその発生率を1とする)、2)マッチされた対照例の対象疾病の期待発生率が曝露例のそれと等しくなる修正上側許容値[それらが等しくなるために対照例の年齢を{曝露例の年齢-θ歳}と{曝露例の年齢+(θ+λ)歳}の範囲にする場合のλ歳]および3)上記の期待発生率の標準偏差比、である。この結果の概略は、(1)対象疾病発生率の年齢増加による上昇率あるいは対照群の確率密度関数の年齢増加による上昇率が1から外れると、マッチされた対照例の対象疾病の期待発生率比が1から外れたり、(2)キャリパー・マッチングの許容値が大きくなると、その比が1から外れること、である。 一般にキャリパー・マッチングは対照例の選定を曝露例の年齢±θ歳の範囲の対照群から実施するものである。がんの発生率や死亡率は加齢により急上昇する。従って、がんに関する分析疫学研究において、この種のキャリパー・マッチングを採用した場合、マッチされた対照例の対象疾病の期待発生率比がかなり大きくなる場合がある。このような事態を回避するキャリパー・マッチングが可能をあることを示した。
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