研究概要 |
産業衛生の分野では揮発性の高い物質やガス状物質に労働者が暴露する機会が多い。職業癌予防の観点から化学物質の発癌性をスクリーニングするためサルモネラ菌を用いた変異原性試験が広く用いられているが、これらガス状や揮発性の高い物質にも発癌性の危険性はある。しかし簡便で定量的な試験方法が確立されていないため、本研究者はこれまでバブリング法により検討を加えて来た。本年度は次の様な定量的測定方法を確立することができた。 ガス状物質の代表として塩化ビニルおよびエチレンオキシドを用いた。 1.試料の作成は、各々のガスボンベより圧調整器を通して一定流量でバブラー管に導き、予め入れておいた10mlのdimethylsulfoxide(DMSO)に流量165ml/分で一定時間バブリングにより気体を吸収させ、このDMSOを希釈して試料とした。但し、エチレンオキシドは、エチルアルコールに吸収した。 2.定量は、ガスクロマトグラフィーを用いた。(1)塩化ビニルは、カラムに5%Thermon3000(Chromosorb W,80-100mesh,AW-DMCS,2.5m×3mm)、カラム温度60℃,注入口温度100℃,キャリアーガスはヘリウム(30ml/分)を用いた。(2)エチレンオキシドは、カラムにPEG20M(AW-DMCS,2.5m×3mm)、カラム温度70℃,注入口温度100℃,窒素ガス(20ml/分)で流した。 3.変異原性試験(Amesテスト)はpreincubation法を用いた。塩化ビニルには大腸菌(E.coli WP2uvrA/pKM)にS9Mixを添加、エチレンオキシドはサルモネラ菌(S.typhimurium TA100)でS9Mix無添加で実施した。 4.その結果、定量値と変異原性との間に、塩化ビニルではY=0.2x+205.3エチレンオキシドはY=0.157x+159.3と極めて信頼性の高い(P<0.01)正の相関を示す回帰直線を得ることができた。この方法は、他のガス状物質の変異原性を定量的に、しかも簡便に検討できるものと思われる。
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