本研究は活性化マクロファージによる抗腫瘍活性発現機構に関与する抗腫瘍性エファクター分子の機能とその生化学的分析を目的とし、次の点を明らかにした。1)ヒト未梢血単球及び肺胞マクロファージは適当な活性化刺激にて癌細胞(ヒトメラノーマ)に対し傷害活性を発現し、その際培養上清中に腫瘍細胞傷害因子(TCF)を放出した。1)ヒト単球の抗腫瘍活性誘導には一次刺激としてインターフェロンガンマ(IFN-γ)が働き、二次刺激として合成性免疫アジュバントであるムラミルジペプチド(MDP)が相乗的に作用することを明らかにしたが、TCF産生についても同様な機序にて誘導された。3)活性化マクロファージ・単球から産生されるTCF活性をもつ因子としてインターロイキン1 (IL-1)腫瘍壊死因子(TNF)が知られているが分子量約30Kの蛋白質がTCF活性をもつことを明らかにした。4)脂溶性MDP誘導体を人工脂質膜リポリームに封入し、ヒト単球の細胞質内に取り込ませることにより作用させた場合、MDP単独に比し、有意に強くかつ長期間にわたり単球の抗腫瘍活性を発現した。そこでIL-1産生能について比較すると、MDPにて活性化された単球は抗腫瘍活性発現と共にIL-1産生を示すが、リポソーム封入MDP誘導体は抗腫瘍性のみ誘導し、IL-1産生誘導を全く示さなかった。このことはIL-1産生誘導に働く機構が膜を介した現象である事を強く示唆した。5)マクロファージ由来の抗腫瘍エフェクターの一つであるTNFの癌細胞傷害機構を分子レベルで解明する為に、リポソーム膜傷害能について検討した所、ホスファチジルコリン(PC)とホスファチジルセリン(PS)とからなるリポソーム膜はPC単独膜よりTNF感受性が高い事。さらにTNFによるリポソーム膜傷害作用はpH依存性を示し、pH5以下の酸性側で強かった。同条件下でIFN-γは完全な膜結合能を示すも殆んど膜傷害作用を示さなかった。さらに、IFN-γはTNFと相乗的に膜傷害作用を有する事が明らかとなった。
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