研究概要 |
目的:気道-肺胞系の各レベルによる生体防御機構の差違を明らかにし、慢性気道疾患の病態の解析や治療法の開発に応用するため、人を対象に研究を行った。方法:対象 年令20才代の正常男子と慢性気道疾患々者(慢性気管支炎=CB,びまん性細気管支炎=DPB,気管支拡張症=BE)。気道-肺胞洗浄法 主に肺胞-未梢気道を洗浄する気管支肺胞洗浄(BAL)と主に中枢気道を洗浄する気管支洗浄(BL)を実施した。分析方法 1)S-IgAはELISA法と免疫拡散法で、IgA,IgG,アルブミン(Alb)らはネフエロメーターで、リゾチーム(Lyz)は比濁法で測定した。気道粘液糖タンパクを喀痰から超遠心法やゲル濾過法でその糖鎖部分のフコースとシアル酸を分析した。肺胞マクロファージ(AM)のメジイエーター放出能を分析した。 結果と考察(1)正常者の成績 BAL液とBL液中の細胞群と液性生体防御成分を比較した結果、BAL液には、AM,リンパ球等の細胞とIgG,Albが多く、BL液には局所産生性の粘液糖タンパク,S-IgA,Lyz,が多く、肺胞領域では細胞格生体防御機構が、気道系では粘液-線毛運動を含む機械的生体防御機構が発達していることが、疋量的に確認された。(2)患者の成績 CB とDPBの間には、気道-肺胞洗浄液が喀痰中の生体防御成分量に差を認め難いが、血清ではS-IgAがCBよりDPBで有意に高い、等の差が認められた。中枢気道より未梢気道が血液に富み、DPBが病変の主座を未梢気道におくため、気道の病変はCBよりDPBで血中に反映され易いと考えられた。 慢性気管支炎では、気道粘液糖タンパクの分泌に並行してS-IgAやLyzの分泌が亢進していること、気道粘液糖タンパクの糖鎖でシアル酸/フコース比が正常値と異なることが明かになった。 AMがアラキドン酸代謝産物や線維芽細胞増殖調節因子を放出し、病態に関与することが示唆された。
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