研究概要 |
呼吸器系では、感染病のみならず喘息,間質性肺炎など各種の疾患でもある時期には好中球浸潤がみられる。これは好中球が感染防御に加えて肺病変の成立にも密接に関係することを示唆している。好中球の遊走浸潤には好中球遊走因子が重要な働きをすると考えられている。本研究は 1.この好中球遊走因子の種類や量が肺疾患によって 2.あるいは呼吸器系の部位によって異なるか否か 3.各好中球遊走因子の起源はどこかという点を解明することを目的として各種の呼吸器疾患の病態や好中球遊走因子の検討を行なった。その結果、細菌性感染症患者の気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好中球数比率及び絶対数は共に著しく増加し、間質性肺炎では軽度の増加がみられた。また、BALF中の好中球遊走因子活性はミクロケモタクティックチャンバーで測定した。BALF中の好中球遊走因子活性は、各種疾患のBALF中の好中球数と比較的関連性が認められ、遊走因子活性の高い場合、好中球数は増加していた。従って、好中球遊走因子の量は、肺への好中球浸潤に重要な役目を有すると考えられる。更に健常肺においても呼吸器系のうち気管支領域には、肺胞領域を主とする下部気道領域に比較し、好中球が多く存在しており、同時に補体C5由来因子を含む好中球遊走因子が認められた。気道は健常者においても外来微生物などに対して感染防御機構が発現し準備された状態にあるものと考えられる。気道感染症のBALF中にも好中球増加と共に補体由来因子の増加が認められ、気道領域の感染性疾患では、補体成分が好中球遊走因子として重要であることが示唆された。一方、間質性肺炎などのBALF中には、補体成分と共に肺胞マクロファージ由来の遊走因子が増加していた。このことは呼吸器系の部位と共に疾患によっても関与する好中球遊走因子の種類や量が異なることが考えられる。今後、動物実験での検索を進める必要がある。
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