研究概要 |
ヒト肺腺癌培養細胞4株すなわちA549および我々の施設で肺腺癌患者の胸水より樹立したAD-【I】,AD-【II】,AD-【III】について各種濃度の分化誘導物質であるdimethyl sulfoxide(DMSO)とbutylic acidで処理し形態学的に細胞分化するか否かを検討した。その結果、AD-【III】株について細胞増殖に影響を与えない濃度(1.5〜2%)のbutylic acid処理により病理学的に分化したと考えられる著しい形態学的な変化を認めた。DMSO処理においては細胞分化は認められなかった。他の細胞については同様の処理によりいずれも細胞の分化は認められなかった。さらに上記細胞4株について上記同様の処理を行ない処理前後の各種細胞こCEA産生態についてPAP法を用いて検討した。その結果butylic acidで処理されたAD-【III】にCEA産生能の明らかな増加を認めた。このCEA産生細胞は形態学的にも分化したと考えられる細胞と一致した。これらのことによりAD-【III】はbutylic acid処理によりCEA産生能をもつ細胞分化したと考えられる。次いで現在AD-【III】の細胞分化によりoncogeneであるc-fos,c-mycおよび【C-ras^(Ha)】の発現が阻止されるか否かを検討中である。すなわちAD-【III】細胞のこれからoncogeneのRNA産生能がbutylic acidで処理することにより阻止されるか否かnorthern blot法を用いて検索中である。preliminaryな実験では細胞分化によりc-mycの発現が阻止されるが追って報告させて頂く。
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