ヒト心房性Na利尿ペプチド(α-HANP)の中枢または末梢投与によるrenin-angioTensin-aldosterone系(R-A-A系)、rasopressin(AVP)および腎機能に及ぼす作用を麻酔下のイヌを用いて検討した。加えて、α-ANPに対するラジオイムノアッセイ(RIA)を開発して種々の体液量のもとでANPとAVPの相互関係をヒトにて検討した。1.α-HANP末梢投与による腎機能、AVPおよびR-A-A系に対する作用:α-HANPは末梢投与すると血圧低下と腎血流量の増加と共にナトリウムとカリウム利尿をもたらした。この時、糸球体瀘過率(GFR)、R-A-A系、およびAVPに変化はみられなかった。すなわち、α-HANPは腎血行動態の変化または尿細管に直接作用して利尿をもたらすと考えられた。 2.α-HANP中枢投与による腎機能、ANP、AVPおよびR-A-A系に対する作用:α-HANPの側脳室投与によりRBFの増加と共にナトリウム・カリウム利尿が生じた。この時、GFRはやや減少するが、血〓、ANP、R-A-A系に変化はみられなかった。しかし、AVPはやや減少傾向を示した。これらの利尿の機序は明らかではないが、ANPが中枢性に腎交感神経系に作用して利尿をもたらす可能性が考えられた。 3.水負荷、高張食塩水負荷、フロセミド負荷によるヒト血中ANPとAVPの相互関係、血中α-HANPは水・高張食塩水負荷による体液量増加に反応して増加するが、フロセミドによる体液量の減少によってはα-HANPは減少した。他方、AVPは主として血清侵透圧の変化に一致して変化した。これらの結果は、AVPとANPが共に体液量や侵透圧の恒常性の維持に重要な役割をはたしている事を示唆している。
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