研究概要 |
1.既報の内因性digitalis様物質に比較的特異的な抗digoxin抗体を用いてratの視床下部を染色すると室傍核のmagnocellular area,視索上核及びその中間に位置する細胞群に顆粒状に染色された。しかし、過剰のdigoxinと抗体を反応させた後の抗体液で染色を試みても、吸収は明かではなかったが、epoxy-activated Sepharose 6Bにdigoxinを結合したaffinity columnを通して抗digoxin抗体を除いた液では染色は有意に減退した。2.室傍核と視索上核の一部を電気破壊したratに8%高食塩食を4週間投与し血圧,尿中排泄digitalis様免疫活性,及びNa,K-ATPase抑制活性を検討した。血圧は高食塩食群では対照の常塩食群に比して2週間後より有意に上昇し、4週間後まで持続した。高食塩を負荷した電気破壊群では血圧上昇は有意に抑制された。また、尿中digoxin様免疫活性は食塩負荷群で著増したが、視床下部破壊群ではその排泄は有意に抑制された。また、Na,K-ATPase抑制活性は免疫活性とほぼ同様に変化した。このことから、内因性digitalis様物質は視床下部で産生され食塩負荷時の血圧上昇に重要に関わることが示唆された。3.内因性digitalis様物質の抽出、精製では尿をSep-PaK【C_(18)】 columnに吸着してacetonitrilで溶出した分画をSephadex G-25でゲル濾過して、digoxin-radioimmunoassayで測定した活性を指標として、更に逆層高速液体chromatographyで分画した。その結果、HPLCでは鋭いpeakの第一相となだらかな第二相の分画を得たが、この分画のATPase抑制活性では第2相の後半に一部overlapする活性を認めるのみであった。以上からdigoxin様免疫活性とATPase抑制活性は一致しなかったが、2.の成績から明らかなように、尿中digitalis様物質は、いわゆるナトリウム利尿ホルモンの概念を満たすものであるので、両者が別の物ではなく、一部が代謝産物であることも考えられる。
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