研究概要 |
免疫グロブリン産生不全症のB細胞異常を、1.免疫グロブリン産生機能分析,2.膜および膜レセプターの異常につき糖タンパク糖鎖構造の分析,3.各クラス免疫グロブリンの産生と発現を遺伝子レベルで分析するという3つの点から検討し、その異常の本態と異質性を明らかにする一連の研究によって下記のような成果が得られた。 1.免疫グロブリン産生機能の分析。Pokeweed mitogen(PWM)誘導免疫グロブリン産生系やEpstein-Barr(EB)ウイルスを用いて検討した。その結果、common variable immunodeficiency,低IgA血症,Wiskott-Aldrich症候群のほとんどの症例でB細胞機能異常が存在した。ごく一部にT細胞サプレッサー機能の亢進が認められた。またB細胞異常にもかなりの異質性が存在した。 2.T・B細胞(株)および患者由来B細胞(株)の膜の アスパラギン結合型糖タンパク糖鎖構造の分析。B細胞(株)では分化が進むと、2本鎖構造ではbisectのGlcNAcを有する構造が出現し、3本鎖構造ではGlcNAcとManの結合において2.4結合が多くみられ、4本鎖構造は減少した。T細胞(株)ではbisectの構造は認められなかった。現在までに検索し得た患者B細胞(株)では正常人との間に質的な差は認められなかった。このbisectの構造がB細胞としての機能発現に関与していることが示唆された。 3.遺伝子レベルでの解析。正常人とcommon variable immunodeficiency患者のB細胞(株)を用いて、mRNAからのタンパク合成を行わせ、免疫グロブリン合成をみた。その結果、患者においてもIgMの合合成が確認され、それ以降での障害が示唆された。更に他の患者についてもmRNAレベルでの検討を続けており、また免疫グロブリン遺伝子(DNA)レベルでの検索も進めている。以上の如く、3つの観点から検討した結果、B細胞異常の本態と異質性が明らかにされ、更に検討を進めている。
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