研究概要 |
60年度の研究結果をもとに、リポソームSODの好中球機能に及ぼす影響を、他の機能検査についておこなった。 61年度は主として、リポソームSODを好中球に貪食させ、その後の好中球機能を検討した。各濃度のリポソームSODと好中球を血清(オプソニン)と伴にインキュベートし、3回洗浄ののち、好中球機能検査をおこなった。5μgの濃度でインキュベートした好中球の各機能(化学発光,スーパーオキシド産生能,貪食殺菌能,運動能)には影響を及ぼさなかった。リポソームSOD50μgの高濃度でインキュベートした好中球は、運動能が低下し、他の機能も軽度の低下傾向を示した。そのため生体に投与される程度の濃度では、好中球機能に及ぼす影響は認められず、故に生体防御機構の一担をになう好中球には、障害を及ぼさないと考えられた。 小児科領域に特有の川崎病の2症例にリポソームSODを使用する機会があり、生体投与を試みた。本症は全身性の血管炎であり、その原因は不明であるが、冠動脈瘤を合併することもある。本症では、血清中に免疫複合体が証明され、我々の検討では一過性に好中球機能に異常が認められる。このことは、好中球が免疫複合体などにより刺激をうけ、活性酸素を生ずる。この活性酸素が組織障害の一因ではないかと考えられる。上記2症例の親が医療関係者であり、リポソームSODの使用を希望されたので投与した。投与後発熱その他の臨床症状は軽快し、著効を呈した。また冠動脈瘤の形成も認めず、本剤の副作用も認めなかった。 一方、リポソームSODの単球機能に及ぼす影響を検討し、好中球に認めたと同様の影響が証明され、62年度炎症学会に報告予定である。
|