研究概要 |
好中球などにより産生される活性酸素は, 酸化的殺菌に非常に重要な役割を演じ, 生体防御機構の一端を担っている. 反面, 生体に対する毒性として組織障害を来たすことが知られている. そのために発症すると考えられる血管炎その他の疾患, 例えばベーチェット病, 川崎病などに対し, 活性酸素の1つであるスーパーオキシド(O^-_2)を捕捉除去するsuperoxid dismutase(SOD)が臨床応用されはじめている. A.M.Michelsonが開発製造したリポソームSOD(L-SOD)は, in vivoに投与された場合, freeのSODと比較して半減期が著明に延長し, 組織への浸透性も優れており, ベーチェット病などに有効性が認められ, わが国でも使用頻度が増加するものと考えられる. 我々はこのL-SODが好中球・単球の機能に及ぼす影響を検討した. L-SODの直接的影響を検討すると, 好中球・単球の化学発光産生・O^-_2産生を著明に抑制した. 一方, 好中球・単球にL-SODを貧食させた後, それぞれの機能に及ぼす影響を検討してが, 生体投与における濃度(5μg/mL)では, 化学発光, O^-_2産生, 貧食殺菌, 運動能に影響を及ぼさなかったが, 50μgの高温度のL-SODでインキュベートした好中球の運動能は, 低下傾向を示した. 小児科領域に特有の疾患で, 有効な治療手段のない川崎病の2症例にL-SODを使用する機会があり, 生体投与を試みた. 2症例の親は医療関係者であり, L-SODの使用を希望された. 投与後, 発熱その他の臨床症状は軽快し著効を呈した. また冠動脈瘤の形成も認められず, 副作用も認めなかった. 1症例については, L-SPD投与前後, 経時的に好中球機能検査を行なったが殺菌能・運動能・価格発光に著変を認めなかった. この結果, L-SODが川崎病に有効であり, 本性の病因に活性酸素が関与していることを示唆するものであった.
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