研究概要 |
T細胞の活性化に必要とされるIL-1に注目し、細胞性免疫低下の報告があるアトピー性皮膚炎患者マクロファージ(Mφ)のIL-1産生能を検討した。〔方法〕(1)IL-1産生能;患者および健康人末梢血より単核球分画を分離し、HSA coated plastic d shに付着させ非付着細胞を除去し、付着細胞(Mφ)を2×【10^5】/ml.に調整しLPS(5μg/ml)添加後2日間培養した。培養上清をC3H/HeJマウス胸腺細胞+PHAの培養系に加え、【^3H】-ТdRの取り込みをIL-1産生の指標とした。また培養上清をHPLCにて分画し同様に検討した。(2)患者末梢血単核球にて各種mitogenを加え培養し【^3H】-ТdRの取り込みで増殖能をみた。〔結果,考案,今後の展望〕(1)HPLCにて分画したLPS添加付着細胞培養上清のIL-1活性のピークは分子量15000の付近にあり、市販のIL-1(Genzyme社)のピークと一到していた。(2)患者のLPS添加付着細胞培養上清のIL-1産生能は正常人に比し低下していた。(3)皮疹の分布範囲から患者の重症度を3段階に分け、IL-1活性との関連を検討したところ、重症者ほど低下していた。(4)T細胞のmitogenであるPHA刺激による患者単核球増殖能とIL-1産生能の間には正の相関傾向がみられたが、B細胞のmitogenであるSACによる患者単核球増殖能との間には相関がなかった。以上の結果からアトピー性皮膚炎患者MφのIL-1産生能低下は本症の免疫異常、特にT細胞機能異常に何らかの関連を持つと考えられた。皮疹の重症度に比例して末梢血由来MφのIL-1産生能は低下していたが、皮疹の成立との関連は不明のまゝである。そこで表皮細胞から産生されるIL-1を検討したいと考え、表皮を真皮より剥離しhomogenate後遠心して得た上清をHPLCにて分画分取し、IL-1を測定し、Mφ由来IL-1の約10倍の活性を得た。今後アトピー性皮膚炎で検討する予定である。
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