研究概要 |
今年度は、昨年度に行った実験腫瘍に関する基礎的検討をさらに進め、全身用MR装置による臨床例の検討に関しては、表在性腫瘍について評価を行った。 1.実験腫瘍の化学療法の【^(31)P】-NMRによる評価に関して、今年度は、フローサイトメトリー(FCM)に加え摘出標本の病理組織的検討を加え、おもに代謝面からの治療効果判定の意義および腫瘍細胞の周期との関連について検討した。化学療法なしの対照群では、腫瘍の増大とともにPi(無機リン),PME(ホスホモノエステル)等のピークの著明な増大が認められPi/PCr値,PME値が上昇した。また、腫瘍内pHは酸性に移動した。ACNU40mg/kg投与群では、Pi,PMEの上昇は抑制され、Pi/PCrおよびPMEは、一時的に減少した。同時に施行したFCMでは、腫瘍細胞の【G_2】,M相への蓄積がみられ腫瘍細胞の増植抑制が示唆された。病理組織的検討では、投与一週間後まで著明な変化はみられなかった。また、テガフール(5-FU)にても同様な結果が得られた。両剤の併用療法では、相加的効果が認められた。このように、in vivo【^(31)P】-NMR法が治療効果の評価法として利用できる可能性が示された。 2.全身用MR装置を用いた検討では、昨年度の基礎的検討を踏まえ今年度は、表在性腫瘍に対する化学療法の効果の評価について検討した。腫瘍は、骨肉腫,軟骨肉腫などで腫瘍の切除術前の抗癌剤の動脈注入療法の前後に、表面コイルを用い【^(31)P】のスペクトルを得て、高エネルギーリン酸代謝の面から検討を加えている。本治療法は、腫瘍組織を壊死に至らしめ、転移を予防する効果がある。検討を加えた症例数は、まだ少ないが、Pi/PCr値,PME値などより治療効果の早期診断に有用であることを示唆する結果が得られている。
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