代謝性骨疾患の早期変化は皮質骨ではなく、海綿骨に現われるため、この診断には椎体の海綿骨の骨塩量(BMC)の測定が不可欠である。我々はX線コンピュータ断層撮影装置(X線CT)が広く普及していることに着目して、X線CTによる椎体の海綿骨の骨塩量の測定を自作の胴体ファントムを使用して、シングルエネルギー法(S法)およびデュアルエネルギー法(D法)で検討し、X線CT法の問題点と臨床的有用性について評価を行なった。 X線CT装置はGE社製CT/T8800を使用し、S法では管電圧を120KVp、D法では120と80KVpで行なった。ファントムはウレタン製胴体ファントム(L、M、S)およびアクリル製胴体水ファントム(L、M、S)ならびに椎体として、【K_2】HP【0_4】溶液を用いて、スライス厚を1cmとして撮影した。S法では1)管電圧による影響、2)胴体の大きさによる影響、3)胴体軟部組織の脂肪含有量による影響、4)椎体の脂肪含有量による影響について検討した。D法ではウレタン製胴体ファントム(M)を使用して、椎体の脂肪含有量の影響を検討した。 1)では120KVpの方が80KVpに比べて画質および統計精度が優れていた。2)ではLに比べてSでは11.8〜9.6%のBMCの増加を認めた。3)ではエタノール0%に比べて30%では7.0〜4.0%のBMCの増加を認めた。4)では25%のエタノールの混入で14.2%のBMCの低下を認めた。S法では椎体の脂肪含有量が骨塩量の測定に最も大きく影響することが判明した。しかし、再現性は良好であり、臨床のスクリーニング検査に使用可能と思われた。D法では椎体海綿骨の骨塩量を、【K_2】HP【O_4】濃度で50、100、150mg/mlの三種類の濃度を検討したが、脂肪含有量が30%でも±10mg/mlの語差範囲でBMCの測定が可能であった。しかし、S法に比べて再現性が劣るため、最初にS法でBMCを測定し、有意に低値を示す患者群にのみ、D法を施行すべきと考えられた。
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