研究概要 |
前年度において、超音波画像を定量的に解析し、びまん性肝疾患に対する診断や、その程度の把握を目的とした検討を行い、良好な結果が得られた。この結果を踏まえて、今年度は更に臨床的な応用を行うべく、乳腺腫瘍における良性・悪性の鑑別にポイントを絞り、検討を行った。(目的)乳腺超音波断層法の診断基準に関する因子の中で、特に辺縁の所見に関する情報の定量的評価を目的とした。(方法)従来の方法と同じであるが、超音波画像上の腫瘤の輪郭を決定した後に、腫瘤内の面績を測定し腫瘤の最大径を直径とする類似だ円を作成した。更に腫瘤の周長及びだ円の面績,周長より腫瘤辺縁の複雑度(K)=【(周長)^2】/面績を求めた。(対象)手術及び生検で確診の得られた32症例(良性17例,悪性15例)であった。(結果)対象例における辺縁の複雑度を算出すると良性群(のう胞1.29,乳腺症1.30,膣瘍1.31,線維腺腫1.41)及び悪性群(癌1.66)の結果が得られ、両者間には差異がみられ、定量的評価の可能性が示唆された。しかし、癌における小腫瘍(直径1cm前后)の場合には複雑度が低く、良性腫瘤との鑑別が困難な症例もみられた。評価不能例については今后、乳腺超音波断層法の診断基準に関する他因子(内部構造の均一性,縦横比)を考慮して検討する必要がある。一方、癌の中でも複雑度にバラつきがみられたが、組織型の違い、あるいは腫瘍の浸潤度、大きさ等の因子を考慮して検討を要する課題と思われた。これらの結果については昭和62年4月、東京で予定されている日本医学放射線学会で口演予定である。
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