研究概要 |
昭和60年度における基礎実験において超音波画像の定量化が可能であることが判明し, 臨床的研究としてびまん性肝疾患を対象とし, その成果を括めた結果, 良好な成績が得られた. この追試を行うべく, 翌61年度においては, 乳腺腫瘍の良・悪性の鑑別に的を絞り, その臨床的評価を試みた. この結果, 腫瘍の辺縁の複雑度を算出することにより, 良・悪性の鑑別がある程度可能であるという結果が得られた. しかし, 今后の課題としては, 小さな癌と良性腫瘍の鑑別については, まだ検討を要する点が挙げられた. 現時点において, 乳腺腫瘍の超音波所見における良・悪性の鑑別ポイントは3つあり, 辺縁エコー, 内部エコー, 腫瘍後部エコーが挙げられる. この中で辺縁エコーの定量化についてはある程度可能であることが今回判明した. 次に内部エコーの様子を定量化することが可能となれば, 良・悪性鑑別の正診率は飛躍的に向上することが予想される. つまり, 良性では均一, 悪性では不均一で且つ大小さまざまなエコーが出現する. これは悪性においては超音波エネルギーが癌組織により吸収・減衰をおこし, 点〜島状のエコーが多数存在するためである. 一方, 生体組織中のコラーゲン又は間質成分を定量的にエコー上, つかまえることが可能となれば, 癌の組織診断も, ある程度可能となることも予想される. このことを踏まえて, 今后は更に症例を増やして, 検討を重ね, 特に内部エコーの評価について超音波の定量化を試み, 追試を行いたい.
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