研究概要 |
1.うつ病の病態生理に基づく分類(昭和60年度) うつ病の生理学的な分類を臨床診断(DSM-【III】)とCNV所見に基づいて検討した。臨床診断による病型では、双極型うつ病とメランコリー型(内因性)うつ病のCNV所見が他のうつ病の所見とは異なることからCNV所見を用いてもうつ病病型を比較的高い精度で予測することができた。次いで、臨床病型を無視して、純粋にCNV所見のみからクラスター分析を実施するとうつ病は3から4群に分類され、主に双極型うつ病とメランコリー型うつ病に対応する類型が抽出された。最後に、健康者から得たCNVとモーズレイ性格検査の外向性尺度(皮質の覚醒水準を反映)の逆U字相関にうつ病患者のCNV所見を適応したところ、双極型うつ病は覚醒低下に、メランコリー型うつ病は過剰覚醒にあることが示唆された。 2.他の主要な精神障害と比較したうつ病の診断(昭和61年度) うつ病群70例の他に正常群105名、分裂病群33例、ヒステリー(身体表現性と解離性障害)群14例からCNVを記録した。うつ病群はCNV所見によって分裂病群とヒステリー群から分離できたが、正常群の所見とは区別できなかった。そこで、臨床診断にかかわらず、CNV所見のみからワラスター分析によって患者群を分類すると正常なCNV所見を示すうつ病群と異常なCNV減少を示すうつ病,精神分裂病,ヒステリー群に分割できた。この結果は比較的厳密な臨床症候評価によって診断されたうつ病群にも病態生理の異なる類型が存在し、生理学的な検査の重要性を示唆していた。さらに、この2群を判別するための基準を判別分析によって求め、精神障害【I】類と【II】類に分類できると共に、【I】類の精神障害が反応性の軽症型である一方、【II】類が中枢性起源の障害を持つ重症型であることを検討した。
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