研究概要 |
1.悪性腫瘍のうち、特に、固型癌において骨転移なく高カルシウム血症をきたした、卵巣癌,腎癌,肺癌,膀胱癌のそれぞれより、骨芽細胞のサイクリックAMP上昇能を指標として、骨吸収因子の精製を行った。最終的に精製された因子は、インビトロにて骨吸収活性を有し、分子量約13000の塩基性蛋白であり、骨芽細胞の副甲状腺ホルモン受容体に結合することが確認された。ただ、当初予定していたアミノ酸構造の決定に関しては、精製物質の量が少なく、腫瘍抽出による方法では困難であることが判明した。最近になり、高カルシウム血症をきたした食道扁平上皮癌の腫瘍細胞の培養上清中に極めて強い骨吸収因子並びに骨芽細胞のサイクリックAMP上昇能を有する細胞系を得、この培養上清中よりの高カルシウム血症誘導因子の精製を続けている。 2.高カルシウム血症をきたした肺癌の1例において血中活性型ビタミンD様物質の高値を認め、腫瘍中より同様の因子を抽出し、この因子がインビトロにて骨吸収活性を持っていることを示し、高カルシウム血症の一因と考えられた。 3.血液系悪性腫瘍、特に、成人型T細胞性白血病は高率に高カルシウム血症をきたすことが知られているが、この成人型T細胞性白血病患者よりの白血病細胞の培養細胞を用い、その培養上清中に、極めて強い骨吸収活性の存在することを認め、その分画の精製を試みた。活性分画は分子量約15000〜20000の間に認められた。この因子に際しても現在培養規模を拡大し精製を試みているが、同様にインビトロで強い骨吸収活性を有するインターロイキン1とは異なる物質であると考えている。また、この研究と並行して実際に、高カルシウム血症をきたした成人型T細胞性白血病患者の骨X線所見、骨組織所見につき検討した。
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