研究概要 |
I型糖尿病(インスリン依存型糖尿病,IDDM)の成因を明らかにする目的で、モデル動物NODマウスを用い、免疫学的側面から検討を行なった結果、次のような成績を得た。 1.膵島浸潤細胞の経時的変化:(1)膵島への浸潤細胞はThy【-1^+】細胞(Tリンパ球)が主体で、なかでもLyt【-1^+】細胞が多数占めていた。(2)asialo【GM1^+】細胞(主としてNK細胞)の浸潤も、しばしば膵島に近接して観察された。 2.脾リンパ球サブセットの経時的変化:対照のICRマウスと比較した結果、(1)膵島炎の発症と一致して、6,9,13週でT細胞の有意の増加が認められた。(2)【Ig^+】細胞(Bリンパ球)は、6、9、13週で有意に低下していた。 3.各臓器に対する自己抗体の経時的変化:(1)膵島抗体は顕性糖尿病発症直前に2/6のマウスで弱陽性。(2)甲状腺濾胞細胞apex側に対する抗体、唾液腺cluctに対する抗体は、それぞれ半数以上のマウスで検出された。(3)抗副腎抗体、抗胃壁細胞抗体はすべて陰性であった。(4)抗核抗体は糖尿病発症後のマウスで陽性を示した。 4.NODマウス脾細胞の膵島細胞障害作用:(1)NODマウス脾細胞の同系およびC3Hマウスの膵島細胞に対する障害作用は、対照に比し高値であった。(2)NODマウス脾細胞のアロキラー活性も高値であった。(3)madified selfに対するキラー活性は、対照と同程度であった。 以上の成績より、NODマウスの糖尿病発症に関連した細胞性および体液性免疫異常が明らかにされるとともに、NODマウス脾細胞による膵島細胞障害反応が明らかになり、膵島特異的T細胞の作用の一端が示された。
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