研究概要 |
健常者における下垂体-副腎皮質系および性腺系機能の加齢に伴う変動を検討し、以下の成績を得た。 1)下垂体-副腎皮質系:(1)視床下部CRFに対する下垂体-副腎皮質系の反応性には加齢による有意の変動を認めなかった。(2)血中aldosteroneおよびde-hydroepiandrosterone sulfateなどの副腎androgensは加齢とともに漸減したが、血中costisolは不変であった。(3)加齢により副腎androgens産生分泌能は低下し、その機序としてandrogen生合成系酵素、特に【C_(17,20)】lyase活性の低下が推定された。またこの酵素活性の低下に脂質過酸化の関与の可能性を指摘した。(4)血中ヒト心房性ナトリウム利尿ホルモン(hANP)濃度は老年者で高値を示したが、容量負荷に対する血中cGMP反応性には老若両群間で有意差を認めなかった。(5)皮膚線維芽細胞のglucocorticoid(GC)に対する特異的結合能には加齢による有意の変動を認めなかったが、老年者ではGCによるaromatase誘導の低下、すなわちその作用発現機構に異常の存在が推定された。 2)下垂体-性腺系:(1)老年者の血中LH,FSH濃度およびLH-RHに対する反応性の増加は、加齢による性腺ステロイドホルモン分泌の低下、次いで視床下部-下垂体-性腺系のnegative feedback機構の作動による現象と推定された。(2)老年男子では、testosteroneに対する視床下部-下垂体系のLH-FSH分泌抑制機構における閾値の上昇、視床下部-下垂体系におけるdopamine作動性機構の機能低下、その機能低下に性ステロイドの関与を示唆する成績を得た。(3)血中7B2濃度は加齢とともに漸増し、血中LH値との間に有意の正相関を認めた。一方、髄液中7B2濃度は加齢に伴い漸減を示した。(4)性行動との関係が注目されているleumorphinの髄液中濃度は40才以降に有意の漸減を示した。(5)皮膚線維芽細胞のandrogenレセプターには加齢によりその最大結合部位数(Bmax)の減少が認められた。
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