研究概要 |
不応性貧血の動態血液学的研究として、末梢赤血球回転,造血幹細胞レベル,染色体異常とクロナリティー,モノクロナル抗体を用いた細胞起源の研究などを目的とした。 不応性貧血には赤血球産生の無効造血が存在することが大きな特徴である。無効造血の評価法としてフェロキネティクスがあるが、本症のフェロキネティクスについて若干の知見を得て近く論文とする予定である。 不応性貧血の細胞遺伝学的研究については、共同研究者により発表され、投稿中であるが、del7,+8などの核型異常が13例中5例の多くにみられた。また、抗血小板単クロン抗体GP-【II】b-【III】aによる不応性貧血の巨核球の観察では、陽性巨核球がかなり多く存在し、うち小型巨核球の比率が高いことが判明した。しかも、血小板数は減少しているので、無効巨核球造血が認められた。以上の末梢血液,細胞遺伝学,細胞免疫学的観察により、不応性貧血においては、三血球系の幹細胞レベルでの造血異常があり、各血球系の造血がいずれも無効であることが示唆される。 このほか不応性貧血の造血異常を基盤として、赤血病,赤白血病に移行する例や、リンパ腫を発症する例があり、報告したが、とくに前者については動態血液学的立場から検討を加えた。 造血幹細胞レベルの研究は本症の骨髄細胞でなかなかコロニー形成が得難く、造血幹細胞レベルでの細胞遺伝学的異常の観察は、次年度における課題である。
|