研究概要 |
1.昭和60年度に作製し、各種実験によりスクリーニングされて得られた4種のモノクローナル抗体(MWT-31,N-14-4,T-93-13,G-16-2-D)に対して、各種培養細胞株(26種,56株)による抗原解析と、免疫組織染色による特異性の検討を行った。 2.MWT-31(Ig【G_1】)とN-14-4(Ig【G_1】)は、神経芽腫と末梢神経に対し高い特異性を示し、その他、奇形腫や9週令の胎児の未熟な神経線維をも認識していた。両抗体の対応抗原を有する細胞株の分布は、N-14-4の方が広いものの同じ様な分布を示した。これは、フローサイトメトリーを用いた細胞膜抗原の解析の結果、陽性率が同じであった事から、N-14-4はその抗体価が高いのみで、同じ抗原を認識しているもとのと思われた。 3.T-93-13(IgM)は、細胞膜上の抗原を認識する抗体で、比較的神経芽腫に対する特異性が高く、ホルマリン固定パラフィン包埋切片でも、その抗原性を失わず、臨床材料を用いた免疫組織染色の結果、神経芽腫の病理組織学的診断に有用と思われた。 4.G-16-2-D(Ig【G_(26)】)は、培養細胞株では神経芽腫とのみ陽性を示し、その特異性は非常に高いが、免疫組織学的には、神経芽腫に対して弱陽性反応しか示さなかった。これは、フローサイトメトリーによる培養細胞株の細胞膜抗原の解析の結果、陽性率は60%台であり、対応抗原を有する細胞の割合が少ない為であろうと思われた。しかも、抗癌剤であるシスプラチン3μg/mlを48時間接触させた後の陽性率が95%以上となった事から、本抗体は神経芽腫の予後判定に非常に有用であると思われた。 5.以上、種々の実験の結果、我々の作製した4種のモノクローナル抗体は臨床的に非常に有用と思われ、更に、現在、骨髄細胞との反応性や、血清診断,抗腫瘍性を検討中である。
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