研究概要 |
科学研究費補助金の援助により、小児固形腫瘍に対する昇圧化学療法に対する研究を行い、以下の結果を得た。 1)家兎扁年上皮癌VX-2癌を用い、angiotensin【II】を静脈内持続投与し、1.5倍の平均血圧の上昇を得た際の、正常組織ならびに腫瘍組織での血流量の変化を交叉熱電対にて検討した。肝臓,腎臓,筋肉に代表される正常組織では、angiotensin【II】による昇圧で、大した血流量の変動は認められないが、腫瘍組織では163〜240%に達する血流量の変化率の増加が認められた。 2)マウス神経芽腫C-1300を実験モデルとしてangiotensin【II】と活性型cyclophosphamideの併用実験を行った。併用群は、活性型のcyclophosphamide単独群に比し、著明な抗腫瘍効果があり、処置後6日目には処置時の腫瘍体積の20%にまで減少していた。 3)マウス神経芽腫C-1300を実験モデルとしてangiotensin【II】とmasked compoundである非活性型cyclophosphamideの最適併用時期ならびに併用効果につき検討した。Masked compoundである非活性型cyclophosphamideを静脈内一回投与することにより血中および腫瘍組織内ともに投与後60分までは活性型cyclophosphamideが増加傾向にあるが、その後漸減した。この結果をふまえて、masked compoundである非活性型cyclophosphamideを単独静脈内投与した群とangiotensin【II】を併用した群とで抗腫瘍効果を検討したところ、angiotensin【II】併用群の抗腫瘍効果は処置後極めて早期より認められ、cyclophosphamide単独投与群と比し増強されていた。 4)臨床応用。横紋筋肉腫の進行症例に昇圧化学療法を行った。併用化学療法はcyclophosphamide,actinomycinD,υincristineであった。従来のVAC療法に比し、効果発現が一週間程早くから認められ、小児悪性固形腫瘍の治療における本法の有用性が判明した。
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