研究概要 |
1.臓器移植においてdonor特異的な免疫不応性をrecipientに導入させるために組織不適合で非血縁間のbeagle,mongrel犬を用いて、術前recipientの全身のリンパ組織に副作用の少ない小量のX線の分割照射fractionated lymphoidirradiation(FLI)を短期間行ない150rad/日,5日間計750rad,最終照射24時間後に骨髄移植を行ない同時に骨髄donorから腎を移植した。術後azathioprine(AZA)2mg/kg/日,2週間、1mg/kg/日,1週間計3週間のみの投与でAZAのみの対照群に比し、約2-3倍の生着延長効果があった。(本法によりイヌ同種皮膚移植においてdonor特異的免疫不応性が得られることは既に報告した、Transplant.Proc.17 830,1985)。 2.さらに術前照射回数を10日間計1500radに増量し、術後AZA 1mg/kg/日を90日間投与したところ、AZA対照群の約3-5倍の生着延長効果があった。また90日後AZAを中止しても生着し続ける症例も得られた。 3.すでに皮膚移植実験において、この免疫不応性はFLIやAZA単独または両者併用のみでは得られず、さらに臓器donorからのIa陽性骨髄細胞移植が加わることが必須の条件であったが、腎移植でも全く同様の結果であった。 4.骨髄細胞の代りに血液(buffy coat cells)を用いたところ、皮膚移植の場合と異なりやや生着が延長したが、骨髄移植の効果には及ばなかった。 5.術後にAZAを用いると血小板減少、肝障害などが頻発したが、AZAの代りにcyclosporine(CYA)10mg/kg/日を90日間用いたところ、生着延長効果もあり副作用もAZA群に比し極めて軽度であった。CYA単独やFLIとCYA併用では無効でやはり臓器donor骨髄の移植をFLIとCYAに併用して長期生着および免疫不応性を得ることができた。(Transplant.Proc.1987,in press) 6.現在、生着促進因子の解明、また前感作などの条件を加え、最適の術前照射条件、CYA投与法の工夫、さらに新しい免疫抑制剤FR900506の併用効果について検討を進めている。
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