研究分担者 |
榊原 泉 国立循環器病センター, 研究所実験治療開発部, 室員 (90153866)
林 良輔 国立循環器病センター研究所, 実験治療開発部, 室員 (00173047)
岩田 博夫 国立循環器病センター, 研究所人工臓器部, 室員 (30160120)
松田 武久 国立循環器病センター, 研究所人工臓器部, 室長 (60142189)
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研究概要 |
中空糸タイプのハイブリッド型人工膵臓に用いる高分子膜に要求される性質は、1.抗血栓性がよいこと、2.大きな物質拡散定数を有すること、3.壁厚ができるかぎり薄いこと、4.分子量分画が5万程度であることである。当初これらの性質を総て満足する中空糸の開発研究を開始したものの、中空糸壁を通じての物質透過性が悪く、中空糸内のランゲルハンス島(ラ島)へ酸素や栄養の補給が十分されず、ラ島は中空糸に封入後約80日でインスリン分泌能を失った。そこで抗血栓性のよい中空糸と、上記2,3,4の性質を有する膜でマイクロカプセル化したラ島を複合化するシステムの開発に着手した。 マイクロカプセル化素材として、低温ゲル化アガロースと各種ポリイオンコンプレックス(PIC)を検討した。各種マイクロカプセルに封入されたラ島の長期培養を行なったところ、いずれも100日以上にわたってほぼ一定のインスリン(40-60V/islet/day)を分泌し続けた。またマイクロカプセル化ラ島はグルコース濃度変化に応答してインスリン分泌量を増減させ得た。さらに高濃度のアガロースにマイクロカプセル化されたハムスターのラ島を、糖尿病マウスに異種間移植したところ、最長53日にわたって血糖値を正常化した。PICマイクロカプセル化ラ島に関しては、いまだ動物実験は行なっていない。しかしマイクロカプセル化の再現性がいい、またマイクロカプセルの性状をポリアニオンを選ぶことでかえられる等、多くの利点を有している。 いまだ本システムの開発は完了していないものの、ポリビニルアルコールが極めて良好に抗血栓性を有していることを明らかにし、さらに上記2,3,4の性質をほぼ満足する膜でラ島をマイクロカプセル化する技術も開発した。今後有孔率の大きなポリビニルアルコール中空糸を作るとともに、この中空糸とマイクロカプセル化ラ島を複合化することで早晩本システムを開発できるであろう。
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