研究課題/領域番号 |
60570621
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
消化器外科学
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研究機関 | 金沢大学 (1986) 福井医科大学 (1985) |
研究代表者 |
三輪 晃一 金沢大, 医学部, 助教授 (80019968)
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研究分担者 |
礒部 芳彰 福井医科大学, 医学部, 助手 (30159818)
中川原 儀三 福井医科大学, 医学部, 教授 (10019549)
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研究期間 (年度) |
1985 – 1986
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キーワード | 膵移植 / 糖尿病 / 膵全摘 / 慢性膵炎 / インシュリン / 膵癌 |
研究概要 |
異所移植された自家膵の機能と形態の変化を臨床的・実験的に検索した。第1例は62才の男性で膵頭部癌で膵全摘を行い、尾側膵を脾動静脈と大腿動静脈分枝の血管吻合で大腿皮下に移植した。移植膵量は全膵重量の約50%で、組織学的に正常膵であった。移植後の糖代謝は、正常に維持され、術後6週目のIV-GTTの血糖値は術前と同じ正常パターンを示した。しかし、IRIの初期分泌反応は欠如していた。また外瘻より分泌される膵液は1日100-400ml,アミレース値は20-80×【10^4】I.U.で、5か月後まで機能低下はみられなかった。6ケ月後の剖検時の移植膵は、葉間や葉内に線維増生がみられ、腺房細胞は減少し、中等度の萎縮がみられた。ラ島は細胞数が増し、過形成を示し、インシュリン抗体を用いたPAP法によるB細胞の染色性は良好であった。他の1例は50歳の男性で、開腹したが切除不能で、併存する糖尿の改善を意図して尾側膵約30%を大腿皮下に血管吻合で異所移植した。移植膵は、強度の線維化・腺房細胞の萎縮をみる慢性膵炎像を示していたがラ島は良く保持されていた。術前30-92g/day排泄されていた尿糖は、術後2週間で0-10gと減少し、3週以降は陰性となった。しかし、IV-GTTによる血糖曲線は改善されなかった。膵液分泌量は1日3-13mlであった。6カ月後の死亡時の膵臓は、ラ島が良く保存され、B細胞の良好な染色性が観察された。犬を用いた実験では、膵右葉切除後に、膵左葉を脾動静脈を血管系として腸骨血管に異所移植した犬では、膵右葉切除のみの対照に比べて、糖刺激による末梢静脈血インシュリン値は、高値を示す傾向にあった。膵自家異所移植にさいして、膵臓への自律神経遮断が末梢静脈血のインシュリン高値に影響を与えているか否かは未解決の問題として残った。以上の臨床的・実験的観察より、異所移植された膵臓は、非移植の対照に比べ、糖代謝により有利に働いているようである。
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