研究概要 |
1 緒言. 水頭症病態の解明を, 脳実質の細胞外液の移動を含む脳実質の変化を追求することを目的に, 生化学的な手法を用いて行った. 2 実験方法. 雑種成犬51頭を用い, 内9頭を正常コントロール犬とした. 42頭に大槽内カオリン注入による水頭症作製を試み, 注入後1〜2週の急性水頭症群(8例), 4〜6週の慢性水頭症群(8例)さらに短絡術施行群(13例)として, 生化学的分析を行った. 脳室拡大の確認はCTスキャン, または剖検により行った. 各群における水分量, 蛋白量, DNA量を測定して比較検討した. 3 実験結果. (1)水分量測定. 正常犬白質で67.3±6.9%, 灰白質で, 82.0±0.8%であったが, 急性期水頭症の白質では70.7±1.2%と有意の増加を示した. しかし慢性期には有意の差はなく, また急性期と慢性期群の間にも有意差はなかった. 慢性期群に対し, 短絡管設置後では水分量は有意に増加していた. 灰白質水分量は, 何れの群においても正常犬群と差を認めていない. (2)蛋白量測定. 左大脳半球の蛋白量をLowry法により測定したが, 正常犬に比し, 急性, 慢性, また短絡術後それぞれ12%, 10%, 8%の増加をみた. (3)DNA測定. Burton変法による測定では, 慢性期水頭症犬, 左大脳半球DNA総量は慢性期水頭症群で正常群より, 僅かに増加を示すとの結果を得た. 4 考察. ・水頭症の病態を, 細胞外液の変化を含む脳実質の変化という面から解明しようと試みた. 水分量の変化は, 従来の他の発表とほゞ変ることなく, 白質のみで増加が確認された. 各群での蛋白量の増加の傾向については, 結論は得られないが, 水分量の増加を伴っているので有意の増加かとも考えられる. DNAより推定する細胞数の増加が慢性期犬にみられた. 短絡術は大きな影響を与えていない.
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