研究概要 |
1.神経生理学的研究:1)視床枕核内に双極電極を刺入し坐骨神経を刺戟して誘発電位の測定を行った。その際脊髄では後索または前側索切截を行った。これら切截はともに視床枕核での誘発電位に大きな影響を与えた。一方腹側後外側核,正中中心核,中脳水道周囲灰白質,中脳網様体などの破壊を行った。その結果前3者の破壊では視床枕核での誘発電位に殆んど影響を与えなかったのに対して、中脳網様体の両側破壊では軽度の影響をみとめた。2)微小電極を用いて視床枕核より161ニューロンの発射と細胞外誘導により記録した。この中72ユニットにも毛まげ,つねり,腹部刺戟,光,音などの刺戟を与えた。半数がこの5種類中のどれかに応じた。視床枕核ユニットの受容野は視床特殊核の受容野とは異って広範囲で境界が明瞭でない。 2.形態学的研究:1)視床枕核に高周波凝固にて損傷部位を作製し連続切片をNauta-Gygax法で染色し変性線維を追求した。その結果、枕核破壊部位によりの変性は外膝状体腹側部(GLV)と外膝状体(GL)及び外側中心核(CL)に変性終末をみとめた。2)微量注入器にてHRPを視床枕核に注入した。HRPラベル細胞が外膝状体と未だ文献上記載されていない視床下部外側部の細胞集団(仮にT核と呼ぶ)が発見された。T核は乳頭体の吻側のレベルで脳弓の外側部に位置している。 3.臨床的研究:45例の頑痛をもつ症例に対し視床枕核破壊術を行った。その効果は1ケ月以内完全無痛29,ほとんど無痛11,計40例(88.9%)いたみの軽減5である。1ケ月以上1年迄の効果は1ケ月以内に死亡例を除くと34例で完全無痛17,ほとんど無痛7,計24例(70.6%)1年以上では死亡例を除くと19例中完全無痛6,殆んど無痛4,計10(52.6%)となる。原因疾患別にみると癌による痛みが最も成績がよく1ケ月以内92% 1年以内87.5%であった。
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