研究分担者 |
稲本 正博 名古屋市立大学, 医学部, 研究員
河合 博 名古屋市立大学, 医学部, 研究員
伊藤 貴 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (90151513)
種田 陽一 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (40145735)
今泉 司 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (70080033)
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研究概要 |
関節軟骨に関する従来からの我々の研究, とくに各種条件下での実験的及び臨床的研究成果を通覧すると, その基本的病態として軟骨の変性所見が主体であることが明らかとなり, 同時に共存するであろう修復所見との関連性を追求する必要を認めた. そこで本研究では次の成果を得た. 〔1〕正常関節軟骨の超微形態学的観察により, われわれの従来の所見に新知見を加え, 形態と機能との関連をより明瞭にした. 〔2〕軟骨細胞の変性に関しては, ヒトの股関節部軟骨の深層部で, 細胞内脂肪変性さらにこれの空胞化を認め, その周辺のグリコーゲン顆粒の異常集積, 細胞内フィラメント様物質の増生と核周辺への局在性がみられた. これらは代謝異常によるものと考えられる. さらに老齢ラットで細胞内変性物質の蓄積, これと粗面小胞体との関連性など, 軟骨細胞変性過程を明瞭にし得たし, 変性後の壊死所見に非常に有意の所見を多数認め, とくに幼時期ラットのそれとの比較では両者の差違と細胞活性の相関性を明瞭にし, 老化の本質に迫り得た. 〔3〕関節軟骨の損傷, 修復実験として, 家兎膝関節軟骨に表在性損傷を与え, 滑液成分であるヒアルロン酸を注入したところ, 損傷部の補てんはみられないものの, 関節軟骨表面の恒常化所見が認められ, 被覆保護作用による軟骨栄養機構の維持に基づく修復態様と理解することが出来, 有意の結果を得た. 〔4〕家兎膝関節内への自家血液を注入し, 実験的関節血腫を作成したところ, 注入初期の軟骨表面では粗造化が明瞭であったが, 経時的に自然修復現象を認め, 4週後にはほぼ正常に復し, 血液成分の影響は一過性と考えられた. 〔5〕二足ラットでかつ肥満食による肥満・二足ラットの軟骨表面の粗造化, 変性所見は, すでに報告した各々単独の場合より早期かつ高度に進行することが認められ, 重複過荷重による力学的要因の重要性を確認し得た. 今後も研究を継続し, 変性と老化, 修復との関連を解明したい.
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