研究概要 |
Duchenne型筋ジストロフィー症(DMD)をはじめとする筋原性疾患においては, 最終的な診断は筋生検に頼らざるをえない場合が多い. しかし, 筋生検を施行してもその時期や部位により所見が異なる場合が多く, 確定診断となりえない場合も少なくない. 一方, 筋原性疾患において, ^<99m>Tc-燐酸化合物によるシンチグラフィーで一部の骨格筋への異常集積が認められることが知られている. 異常集積を生じる時期が個々の筋のどの様な病期に一致するかを知りえれば, 筋生検の至適時期を決定する手がかりとなりうると考え, 異常集積の機構を知る目的で動物実験を行った. 昭和60, 61年度は塩酸ブピバカインをラットに筋注し筋の壊死, 再生のモデル動物を作製したうえで, ^<99m>Tc-methylenediphosphonate(^<99m>Tc-MDP)の筋への集積を経時的に調べ, 生化学的および形態学(光顕像)的変化との関係を検討した. その結果^<99m>Tc-MDPの集積は筋の壊死, 再生の過程のうち, 壊死にいたる過程の初期に生じ, creatine kinaseの漏出を認める時期に一致することが明らかにされた. 昭和62年度は, 同じ動物モデルを用いて筋の壊死, 再生の過程を電顕的に観察し, 集積率の変化との関係を検討した. その結果, 異常集積の生じている時期の筋の電顕的所見では, 筋原線維の過収縮および断裂, 筋小胞体やミトコンドリアの膨化, 破壊を認め, 筋形質膜の広範囲にわたる欠損を認めた. また, 基底膜はよく保たれていた. これらの所見はDMDでみられる所見とよく似ていた. 異常集積の認められなくなる時期には筋形質はマクロファージなどによりかなり処理され, 傷害された筋細胞の細胞成分はほとんど認められない状態であった. これらの結果から, 異常集積は筋細胞が壊死に陥る急性期に生じ, 特にDMDが疑われる場合は, この時期に筋生検を施行すれば特徴的な組織所見が得られることが示唆された.
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