研究概要 |
いわゆる急速破壊型股関節症(以下RDC)の病態を検索するに際し, 早期に関節裂隙の消失する点, また免疫学的な異常が示唆される文献に着目し, 関節内局所免疫異常の可能性の有無をテーマとした. 方法として酵素抗体法のPAP法を用い, 我々の開発した方法を加え反応をより鋭敏とした. まず免疫グロブリンが関節軟骨内にどれだけ沈着しているかを, 脱灰した摘出骨頭を用い検討した. そしてその効果を他の関節症〔変形性股関節症, 大腿骨頭壊死, リウマチ性股関節炎(以下RA)〕の骨頭と比較検討した. その結果, IgGの沈着が他の関節症と比べて多くみられた. 以上のデータを第12回日本リウマチ・関節外科学会にて発表した. 次に関節軟骨内の免疫複合体の存在の程度を検討した. 方法として摘出骨頭の連続切片の同部位に免疫グロブリンと補体の存在を証明する方法を開発した. その結果, RAにみられる免疫複合体の存在が, 他の関節症より多くみられた. 以上のデータを第13回日本リウマチ・関節外科学会にて発表した. 以上より次のことが考えられた. RDCの早期にみられる関節裂隙の消失, つまり関節軟骨の消失はRA同様, 免疫複合体の関節軟骨への異常沈着, 軟骨破壊が生じる結果ではないかということである. ただ前述の事項をより確実にするために, 脱灰操作の影響を除くための非脱灰標本での検討が必要である. しかし, RDCの症例がまれなこと, また疾患の性質上, 軟骨の残存していない場合もあり, PAP法が可能な非脱灰標本の作製に成功していない. そのために, 症例数が多く, また非脱灰標本が比較的容易なRAの標本を用い, 脱灰標本と非脱灰標本での差異の有無を検討している. 差異の無いことが証明されれば, RDCの関節軟骨の免疫複合体の異常な沈着はより確実なものとなるが, 何故そのようなことが生じるのかは, 今後の研究に待たねばならない.
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