研究概要 |
Dysoxia(Hyperoxia,Hypoxic Hypoxia後のreoxygenation)による組織障害の仮説として活性酸素発生増加を考え,中枢神経系での活性酸素発生増加と酸素濃度との関係をラットを実験動物としてin vivoで検討することを目的とした。 1)ラット脳in vivoでの活性酸素発生の測定方法として,H_2O_2発生を指標とし,H_2O_2依存性のAminotriazole(ATZ)による脳内の内因性catalase活性の抑制を指標として測定する方法を確立した。 2)ラット脳の生理的代謝過程におけるin vivoでの活性酸素(H_2O_2)発生は約77pMと計算されたが,Hyperoxia(0.6ATA O_2,1ATA O_2,3ATA O_2)に暴露すると酸素分圧に比例して増加し,中枢神経系酸素中毒の発生する3ATA O_2では約300%増加することから,活性酸素発生増加が中枢神経系酸素中毒発生に関与することが示唆された。 3)ラットを窒素(N_2)による.Hypoxic Hypoxia(5%O_2,10%O_2)又は笑気(N_2O)によるHypoxic Hypoxia(6%O_2)に暴露しても生理的代謝過程におけるH_2O_2発生と比較し有意の変化がみられなかった。 4)N_2Hypoxia負荷後にreoxygenationとしてHyperoxia(1ATA O_2,3ATA O_2)に暴露するとH_2O_2発生は2)の結果と異なり各酸素分圧間の差がなくなると共に,対照群(Hypoxia負荷のない空気吸入群)とも有意差がなくなった。 5)N_2O Hypoxia負荷後のreoxygenationにおいてはH_2O_2発生が各酸素分圧間で差がなくなることは4)の結果と同様であったが,対照群およびN_2Hypoxia群と比較し有意にH_2O_2発生が増加した。 3)〜5)の結果よりHypoxic Hypoxia自体では活性酸素による障害は考えられない。又Hypoxia負荷後のreoxygenationではN_2Hypoxia後では活性酸素による障害の増悪は考えられないが,N_2O Hypoxia後では活性酸素発生増加による脳障害の増悪が示唆された。
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