研究概要 |
高頻度陽圧換気法の低酸素性肺血管収縮反応に与える効果についての研究はあまりおこなわれていない. 我々はネンブタール麻酔下の雑種成犬に犬用に改良したカーレンス気管内チューブを挿管し, 高頻度陽圧換気法の低酸素性肺血管収縮反応に与える影響を閉胸時と開胸時で検討した. I.閉胸時の変化 通常の調節呼吸を両側肺に行い, 次の3群に分けて実験を行った. A群:一側肺を酸素で, 他側肺を窒素でそれぞれ調節呼吸を行ったもの B群:A群での窒素換気肺に10Hzの高頻度陽圧換気を重畳したもの C群:一側肺を酸素で調節呼吸を行い, 他側肺を窒素による10Hzの高頻度陽圧換気を行ったもの 動脈血酸素分圧は窒素換気により, 全ての群で低下したが, A群では30分値の92.8mmHgに比べて, 120分値で161.6mmHgと有意に上昇することが判った. これに対してB群では30分値70.5mmHgから120分値87.6mmHgに, C群では30分値133.6mmHgから120分値123.1mmHgと変化せず, 有意な上昇は見られなかった. 平均肺動脈圧は全ての群で上昇する傾向が見られたが, 統計学的に有意な変化ではなかった. II.開胸時の変化 I.のC群と同じ実験を開胸犬で行い, 低酸素性肺血管収縮反応の変化を左肺動脈に装着した電磁流量計から得られた左肺血流量の変化から検討した. 窒素換気により動脈血酸素分圧はI.のC群と同じ変化を示し, 左肺動脈血流量は軽度低下したが有意な変化ではなかった. 今回の研究結果から, 高頻度陽圧換気法はそれを単独で行っても, また従来の調節呼吸に重畳しても低酸素性肺血管収縮反応を抑制することが判った.
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