研究概要 |
1.精巣組織におけるDNA合成について:正常精巣1例と乏精子症精巣7例を生検で採取し、Trowell法で器官培養した。3H-チミジンの取り込みをみるラジオオートグラフィーで検討した。培養24時間でDNA合成が認められ、乏精子症の1例はテストステロン添加によりDNA合成が増加した。厚糸期精母細胞でのDNAのrepair synthesisは観察できなかった。 2.精巣細胞におけるmRNAについて:正常1例、高度乏精子症3例、ホルモン療法を施行している妊学性のあった前立腺癌1例から精巣組織を生検し、正常精巣特異のTissue specifying geneを検討した。共通遺伝子は適切な男子病理解剖例から得た脳・肝・腎組織により求めた。高度乏精子症と前立腺癌精巣は組織学的に類似し、遺伝的には正常者と前立腺癌症例は精子発生能という点で類似している。各組織からmRNAを抽出し、逆転写酵素により相補的DNAを合成、これを〔【^(32)P】〕で標識してプローブとした。現在まで正常精巣に特異的な相補的DNAを選択できたが、これからNorthern blot hybridizationによる確認とSouthern blot hybridizationによる遺伝子の検索を行う予定である。 3.ラット精巣の年齢によるH-Y抗原量について:C57BL/6マウスで作製したH-Y抗体を用いて、出生直後(2日齢)、青春前期(21日齢)、成熟期(56日齢)のH-Y抗原量を測定した。精巣構成細胞当たりのH-Y抗原量は出生直後で最も多く、以下青春前期、成熟期の順で下降した。 4.内分泌環境を変えた場合の精巣腫瘍の発生について:生後7日,21日,56日齢のラットに100IU/kgのHCGを週2回,4週間注射した。7日齢の精巣で3/10頭に、21日齢で1/10頭に異常精細胞の出現を認めたが、56日齢では認められなかった。次にHCG処理、未処理ラットDNA分布パターンを検索した。 5.総括と今後の研究計画:前述の成果を基に、精巣の器官形成と精細胞の分子レベルでの解析をしてゆく予定。
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