ヒトO型赤血球より精製したT抗原をラビットに免疫レポリクローナル抗T抗体、またマウスに免疫しモノクローナル抗T抗体を得た。対象材料は、パラフィン包理された膀胱腫瘍と、その担癌患者であり、脱パラフィンされた膀胱腫瘍上のT抗原あるいは、ノイラミニダーゼ処理後に表現されるCripticT抗原の有無について検索を行なった。その結果、CripticT抗原が、正常に表現される性質の腫瘍が予後がよく、すでにT抗原が表現されている腫瘍、またはCrypticT抗原も存在していない腫瘍は再発率が高いことが認められた。この結果はPNAレグチンを用いた今までの報告と同様であった。また腫瘍の異型度との関係も、T抗原が表現されている腫瘍やCrypticT抗原も存在していない腫瘍が悪性度が高かった。組織標本の染色パターンの大部分は腫瘍細胞膜がびまん性に染色されるもので、Coonらの報告にある一部の細胞集団のみが染色されているようなことや、細胞内の構造物が染色されているようなことはなく、これはPNAと抗体とのT抗原に対する結合力のちがいではないかと思われた。実際T抗原と抗T抗体の結合に対するPNAのinhibitor assayの結果では、60倍のPNAが必要であった。このように我々の作整した抗T抗体により、膀胱腫瘍の悪性度あるいは再発の予測がある程度可能となり得ると考えられた。
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