研究概要 |
1.閉塞腎における収縮蛋白の変化 ラットおよびウサギの一側尿管を3日間閉塞した。短期閉塞腎を対象に、収縮蛋白の変化を検討した。SDS〜polyacry lamide qel電気泳動法によって収縮蛋白含量を測定したところ、ミオシン含量は閉塞腎において有意に増加していたが、アクチン含量には変化を認めなかった。DACM-HMM法によるアクチンフィラメントの観察から、閉塞腎においては糸球体アクチンフィラメントは変化しなかったが、近位尿細管刷子縁におけるアクチンフィラメントはほとんど消失していることが明らかとなった。 2.拡張尿管の収縮蛋白 1)家兎拡張尿管モデルを使用して、基礎的検討を加えた。その結果、尿管全層に含まれる収縮蛋白量は筋量の増減を反映するだけであったのに対し、筋層内収縮蛋白含量は尿管平滑筋自体の発生する活動張力とよく相関することが明らかとなった。したがって、収縮蛋白含量を臨床診断に用いる場合、筋層内含量の方が適切な指標になりうると結論できた。 2)12名の患者から摘出した拡張尿管について、筋層内のアクチン,ミオシン含量を測定し、病理組織所見と対応させた。8例の拡張尿管では筋層内収縮蛋白含量が著しく増加し、組織学的には筋肥大の所見を示した。DNA含量で筋細胞当りのアクチン,ミオシン含量を計算したところ、両者とも有意に増加していることから、筋肥大とは細胞内の収縮蛋白量の増加した状態と推定された。この他2例の拡張尿管では収縮蛋白含量が正常と変りなかったが、残りの2例ではアクチン,ミオシン共に著明な減少を示し、組織学的に筋萎縮の所見であった。
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