研究概要 |
〔目的〕周産期医学において重要な課題の1つは, IUGRとそれにともなうSFD発症の要因の解明とその予防である. われわれはヒトの場合に近い妊娠高血圧の好適なモデル動物として妊娠SHRSPを用いている. さきにIUGR発症要因を追及する目的で子宮胎盤を組織学的に検討し, 胎盤内母体側動脈のspiral arteryが中心を貫く部分の血管内腔の断面積と肥厚の程度を測定した. その結果発症要因の一つは胎盤内母体側血管のnarrowingとspasmsによるものであろうと考えた. 今回はこれまでの実験から予防効果があると考えられた薬物を投与し, 前記断面積と肥厚の程度を測定した. 〔方法〕約12週令, 非妊時体重180〜200g, 血圧200mmHg以上のラットを用いて交配したWKYをコントロールに, 未処理SHRSP, SHRSP-M(妊娠15〜19日, MgSO_4・7H_2O0.3ml静注), SHRSP-S(妊娠11〜15日Solcoseryl0.5ml静注), SHRSP-K(妊娠11日より0.38% KCI投与)の5群を妊娠20日で比較した. 〔成績〕血管内腔断面WKY(82, 129±129, 969μ^2)が最も広く, 末処置SHRSP(42, 175±6.627μ^2が最も狭い. SHRSP-M(68, 117±4.907μ^2), SHRSP-S(57.898±2.723μ^2), SHRSP-K(66, 138±1, 934μ^2)はSHRSPより有意に広く, WKYに近い. 壁肥厚の程度(厚さ/面積)はSHRSP>SHRSP-K>SHRSP-S>WKY>SHRS-Mとなり, SHRSPと並びにSHRSP-Mとの間に有意差がある. 〔結論〕3種の薬剤は子宮盤内母体側血管に作用して血管内腔断面積を拡大させる. またMgSO_4・7H_2Oにはspasmsを緩和する作用がある. これらの作用によりIUGRの発症を予防するものと考えられる.
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