研究概要 |
1.5種類の絨毛癌細胞株(HCCM,ENAMI,CH1,CC1,CC2)を材料に分子生物学的手法をもちいて絨毛癌発生機構とがん遺伝子の関係を検討した。C-onc遺伝子の構造変化を既知の16種類の癌遺伝子プローブを用いSouthern blot hybridizationによって調べるとENAMI株にC-mycの遺伝子増幅とC-fms遺伝子の組み換えが観察された。これらの変化は5株に共通したものではないため、絨毛癌化との直接の因果関係は考え難いものの、腫瘍の進展や株化などのいずれかの段階で何らかの役割を果したものと推測された。 さらにC-onc遺伝子の発現をNorthern blot hybridizationにより調べた。その結果少なくとも11種類から13種類にも及ぶC-onc遺伝子がさまざまなレベルで発現していることが観察された。H-ras,K-ras,N-ras,C-myc,N-myc,fos,src,yes,fms,erbB,rafは全株において、またab1,sis,fpsは株により発現していることが判明した。とくにfosとN-mycは正常線維芽細胞と比べ著しく発現が増大していた。このような多くのC-onc遺伝子の発現例はこれまでに報告されていない。 さらにC-onc遺伝子に発癌活性をもたらすような特定の変異の存否を検討するため、マウスNIH3T3細胞、アデノウィルス4型誘発不完全トランスホーム細胞(4CY-4-3に絨毛癌細胞DNAをトランスフェクション法により導入した。しかしNIH3T3細胞の形質転換は検出されなかった。また4CY-4-3細胞ではfocusの形成を認めたが、二次transfection後ヒト固有配列Aluが消失したため、現在、Genomic Libraryを作成し、発癌活性を示す癌遺伝子の同定を試みている。 2.絨毛癌細胞株から6-チオグアニン抵抗性細胞の作成を試みたが、低抗性細胞の作成に成功していない。このため絨毛癌は通常の方法では細胞融合を行えないと判断し、現在Neo遺伝子のトランスフェクションを行い、Neomycin抵抗性絨毛癌細胞株の作成を試みている。
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