研究概要 |
昭和61年度以前までに胎児呼吸様運動の解析装置の開発を終り、この装置を用いて、ヒト胎児の呼吸様運動を解析し、呼吸様運動パターンの成熟化に伴い、生後の呼吸障害の減少、とくに新生児呼吸窮迫症候群や無呼吸発作の減少が認められ、胎児の呼吸様運動の分析により、生後の児の呼吸器系の成熟度の予知が可能であることを知った。 昭和61年度はこれらの成果を基礎的に証明するために、胎児の呼吸様運動から得られるパラメーターのうち、どれが最も胎児の神経系の成熟度と関連するかという問題をテーマに研究を行った。 すなわち、妊娠25週から32週の正常妊婦15人を対象に、呼吸様運動、胎動および胎児の瞬時心拍数を1人について180分、計2,700分連続記録した。 その結果、9秒以下の呼吸運動の持続時間の頻度は26週の49%から31-32週の10%に減少し、逆に30秒以上の頻度は13%から43%に増加した。とくに、30秒以上の呼吸運動の持続時間の増加が著明であった。また胎動総数に対する一過性頻脈の割合は在胎週数とともに増加し、この割合と30秒以上の呼吸様運動の頻度との間には有意な相関が認められた。さらに、単位時間に占める一過性頻脈数の増加に比例して、胎児呼吸の30秒以上の頻度は増加し、心拍数基線細変動値と30秒以上の呼吸様運動の頻度との間にも正の相関が認められた。胎児心拍一過性頻脈、あるいは心拍変動値は胎児の神経系の成熟度を表わすことがすでに確立していることから、胎児呼吸様運動のうちでも持続時間が30秒以上の胎児呼吸の頻度の計測は胎児の神経系の成熟を反映するものと結論し得た。 今後は胎児呼吸様運動の持続時間(とくに30秒以上の)と生後の児の呼吸の種々なる臨床的パラメーターとの関係を追求して行きたいと考えている。
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